最終更新日2025年6月16日
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詳解世界史歴史地図・図解


ムスリム商人のおもな貿易路と主要取引品



(この画像と説明文は『世界史地図・図解集』に収録されています)


 イスラーム教には,中世のキリスト教義にみられるような商業を軽視する教義はなく,むしろ大切にしました。その理由は預言者ムハンマド自身が商人であったためと考えられます。『コーラン』のなかに「はかりとますは公正にあつかえ」とあり,不正行為は神の名の裁きを意味しました。また,正統カリフ時代から始まる大遠征の結果,東は中央アジアから西はイベリア半島まで,イスラーム法が適用されムスリム商人たちの活動をささえました。
 西アジアを中心に広大な領域を支配したイスラーム諸国家は,ビザンツ帝国の金貨とササン朝の銀貨を継承し,ディナール金貨とディルハム銀貨を正式な流通貨幣とする二本位制をとりました。ウマイヤ朝やアッバース朝時代には,ヌビアやアフリカ内陸部で産出する金と,イラン東部からもたらされる銀をもちいて貨幣が鋳造され,遠距離貿易の取引に広く使用されました。
 ムスリム商人はインド洋海域ではじつにさまざまな高価で,かさばらない商品を扱かいました。とくに乳香(アラビア半島南部),白檀(セイロン島)などの薫香,焚香は,インド洋北辺とその内陸部に発達した都市や国家および諸宗教の祭儀には欠かせない必需品でした。
 ムスリム商人は,東南アジア経由で大量の乳香を宋・元代の中国に持ち込みました。南宋政府はその輸入を独占して財政の重要な財源にしたといわれます。

ムスリム商人のおもな貿易路と主要取引品