三圃式農業
中世のヨーロッパで広くおこなわれていた三圃式農業は、共有の外耕地を3分割して、冬作・夏作・休耕地に区分し、10年程度で割替えるローテーションを組み、耕作する。休耕地には牛や馬が放牧され、その糞尿が農地の地力を維持した。割替えは、肥沃度や距離を勘案して行われ、やがて共有が廃止され固定し、休耕地にはビートなどが導入され、混合農業の発展につながった。また、外耕地に対して、当初から農家の私有地として菜園、あるいは裏の畑の性格が強い内耕地は、採算がよければ拡大されて園芸農業の樹園地や野菜畑として、あるいは外耕地とともに酪農の飼料畑として利用された。ときには、豚・鶏・兎などの小動物が飼われた。
商業的混合農業
混合農業は、穀物生産と、飼料作物栽培による肉牛などの家畜生産とが混合した農業である。商業的混合農業は飼料作物栽培の比重が高く、畜産物の販売に重点をおく。一部では小麦など穀物生産、あるいはトウモロコシや牧草などの飼料生産に特化し始めている。西ヨーロッパ、アメリカ合衆国のトウモロコシ地帯、アルゼンチンのパンパなどにみられる。
園芸農業
ヨーロッパの園芸農業は、オランダの花卉(かき)栽培、温暖な大西洋岸と地中海岸の野菜のいわゆる促成栽培や果樹栽培、ボルドー・ブルゴーニュなど条件がよい耕地では、ブドウ畑がみられる。また、野菜・果実・花卉などを都市への出荷を目的として、世界の大都市周辺に多くみられる。
酪農
ヨーロッパでは酪農は、おもに通年牧草が枯れない冷夏暖冬の西岸海洋性気候の北海沿岸にみられる。また、夏季は山地で放牧し、谷間で飼料を栽培し、冬季は谷間で牛や羊を舎飼いする酪農は、移牧とも呼ばれ、アルプスだけでなく地中海式農業の一部として、スペイン・イタリア・ギリシャなど地中海地方の山地にみられる。アメリカ合衆国では、五大湖沿岸に分布する。
地中海式農業
地中海式農業は、ヨーロッパのみならず中東やアフリカの地中海岸にもみられる。その特徴は、同時栽培(ポリカルチュア)にあって、耕地が樹園地であると同時に、畑である。樹木は、オリーブ・ブドウが指標作物である。柑橘類は、14世紀にアラブ人が伝えた灌漑技術によって、栽培されるようになった。樹間は小麦畑と休耕地の二圃制で、羊やヤギが飼育され、夏季は山地にトラックなどで運ぶ移牧がみられる。しかし、樹間作物が廃止されて、樹園地に特化した園芸農業も行われる。カリフォルニア・チリ中部・オーストラリア南東部南西部などにもみられ、これらの地域では果樹栽培が中心である。
大学入試問題例
1 産業革命以降、工業が発達して都市に人口が集中すると、農産物の販売をおもな目的とする( )的農業が拡大した。 商業(企業)
2 混合農業の前身となった、農地を三分して、夏作地・冬作地・休閑地を毎年交換させる農法を( )と呼ぶ。 三圃式農業
3 中世に起源をもつ三圃式農業から発達した有畜農業が( )農業である。 混合
4 アルプス以北では、伝統的に穀物栽培と牧畜を組み合わせた( )が盛んであるが、近年は農業生産の専業化が進んでいる。 混合農業
5 混合農業とは、(1)栽培と(2)飼育が有機的に結びついた農業である。 1作物 2家畜
6 混合農業は、主要穀物と( )を栽培するとともに肉用家畜を飼育する農業である。 飼料作物
7 混合農業には、食用作物の栽培の比率が高い(1)的混合農業と、飼料用作物の栽培の比率が高い(2)的混合農業がある。 1自給 2商業
8 混合農業から家畜が切り離され、牛乳やバター・チーズ生産に特化した農業が( )である。 酪農
9 北海やバルト海周辺、大西洋の沿岸地域、内陸の山間地域では、( )が発達している。 酪農
10 野菜や花卉(かき)を栽培し、かつて近郊農業の代表だった( )農業も、生産技術と輸送手段の高度化によって都市の遠隔地でも行われるようになった。 園芸
11 都市への出荷を目的とする園芸農業は( )・果樹・花卉などを合理的・集約的に栽培する。 野菜
12 アルプス以南では、(1)気候のもと、伝統的に(2)農業が行われてきた。 1地中海性Cs 2地中海式
13 夏に乾燥し、穀物栽培に適さない地域では、オリーブやレモン・コルクガシなど樹木作物の栽培と家畜の飼育を特徴とする( )農業が行われる。 地中海式
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